井上麻里奈*首

井上麻里奈の長い首からは、蛇めいた印象を受ける。ヨーガでは、生命エネルギーたるクンダリーニを蛇に喩える。キリスト教の悪魔は、蛇の姿を借りてイブを誘惑した。蛇女優・毛利郁子の例を引くまでもなく、蛇は、隠微で淫靡な、いわば負のエネルギー、妖物的な女の業とでも言うべきものの象徴であり続けている。
 しかし、同時に、井上麻里奈の長い首は、その小さな頭とあいまって、すっきりと爽やかな印象にも繋がっている。実際、シルエットはシンプルになるのだ、長い、ということはある程度太い首に、小さな頭が乗っていれば。
 この、観念的な業の重たい印象と意匠的なシンプルさの軽い印象の矛盾こそ、井上麻里奈の最大の魅力だ。頭のよいオタク娘・井上麻里奈が隠し持つ、女の業の鋭い毒牙。裏切られたいという声ヲタの根源的な欲望をこれほど刺激する声優もそうはいない。(郁)