堀江由衣*八重歯

声優誌のグラビアなどで堀江由衣の顔を見たとき、誰もがまずその八重歯に目を奪われる。たとえ口を閉じていたとしても、その存在感は隠しきれるものではない。グラビアなどでは口を閉じた写真が多く、ファンからは「八重歯をもっと見せて欲しい」といった意見をよく耳にする。本人が意識的に八重歯を隠そうとしているのか、ということに関しては一ファンとしては本人の考えや気持ちは分からないし、議論しようがない問題ではあるが、我々は何故堀江由衣の八重歯に惹かれるのだろうか、ということについては考えることができる。ここでは、生命の持つ非対称性という観点からこの問題を考えてみたい。人体は分かりやすい左右対称の例としてよく挙げられるが、実際の人間は完全に左右対称ではない。右利き左利きの違いや、心臓などの臓器の配置など、非対称を持っている。これについては堀江由衣の八重歯の存在からも明らかである。そもそも生体を構成するタンパク質はアミノ酸からできているが、もっとも単純な構造を持つグリシン以外はL体とD体という2つの鏡像異性体を持っている。鏡像異性体とは要するに、右手と左手のような関係である。普通に考えれば、生体中にL体とD体が50%ずつ含まれていそうなものだが、基本的にはL体のアミノ酸のみがタンパク質の構成成分として使用されている。これは地球上の全ての生命で共通である。つまり、生命はL体とD体を明確に区別しており、分子レベルの視点から見てみると、生命は非対称なのだ。古来エジプトの時代から人類はシンメトリーの持つ様式美に魅了されてきたが、これは人体の持っていない完全な左右対称への憧れから来る想像美に過ぎない。地球上の全ての生命に普遍的に存在している非対称性の持つ美しさ。堀江由衣の八重歯は、人体、ひいては生命の非対称性の美しさ、また自身の声の持つモノ性というアンバランスさを体現していると言えるのだ。(□)