伊藤静*額

ムスリムは額にたこができるという。彼らにとって礼拝は五行の一つに数えられる大切な営みなのであるが、それを欠かさず行ってきたことの証、その名誉のたこなのだ。
 さてこのように額とは文化圏によっては口以上にものをいうキャンバスなのだが、伊藤静の額が我々に語りかけてくるものは何だろう。
 彼女はまずその広々とした十勝平野のごとき額を隠そうともしない。むしろ見せ付けるような髪型ですらある。顔のその他のパーツはなぜか不思議と顔の中心にひきつけられるような焦点を持つ。そして歯並びはまさに歯並び悪い子萌えを体現してくれている。このような不安定な顔の下三分の二を上三分の一のどっしりとした台形が支える。そのアンバランスさと安定感がかもし出す絶妙な均衡。さらに言えば相方であるところのナバすら支えうる輝きなのだ。彼女の額が語りかけるもの、それは顔の黄金比ルネサンスの訪れだったのかもしれない。(系)