豊口めぐみ*額

狭小住宅という言葉がある。十五坪以下の狭い土地に立てられた住宅をそう呼ぶのだが、豊口めぐみの額、彼女の小顔の上にしかも十二分以上どころでない広さをもって作りつけられたそれが呼ぶ感動は、まさに狭小住宅のそれに近い。豊口の168cmの堂々たる長身は、しかし、不思議なほど、長さこそ感じさせるものの大きさをは感じさせない。手足も首も細長く、頭も小さくて、どこにも、広い、とか、大きい、とか、そういう印象を与えるべき部分がないのだ。にもかかわらず、あの額。顔と殆ど同じ幅を取る、無理くりにもほどがある、ラディカルな設計。限定されたサイズ、己の限界の中で、どこまで機能を突き詰められるか。A‐4スカイホーク然り、ローバーミニ然り、機械工学の精髄が芸術と通底する瞬間の快が、あの額には溢れている。細長いのに、広い。そういう矛盾を可能ならしめた造化の奇蹟に、我々はゾクゾクするような機能美を感ずるのだ。(郁)