相澤みちる*髪

エレガンスは、愛さぬ事の最も難しい概念のひとつだ。雅ともし訳したならば、それは文明の起源とさえ密接に連関する。都市こそは諸文明の種子にして子宮にして結晶なれば、都会的洗練を意味する雅=エレガンスを求めるのは、我ら文明人の本能と言っていい。
 しかして、獣性、洗練されることそのものを拒絶する野卑で力強い領域に、文明に骨の髄まで冒されたひ弱な我ら文明人がひきつけられる、というのも逆説的ながら動かしがたい真実であって、アーティフィシャルなるをもって旨とするアニメにその生身を叩き込む声優には、だからこそ、獣の臭いがあってほしい。
 相澤みちるの多すぎる髪からは、この獣の臭いがする。質より量、ひたすらに量。慣性恒温性を求めてひたすらに巨大化した竜脚類のごとき、大雑把という正しさ。野暮ったい髪型もこの正しさに逆らわない。この若き凶獣から、今後も僕らは目が離せない。(郁)