釘宮理恵*肋骨

女性声優を初めて眼前にしたとき、想像以上に小さくか細いという印象をもったことはないだろうか。私はサイン会で初めて間近で彼女を見た5年前の衝撃が忘れられない。いったいこの小さな身体からどうして甲高く力強いあの声が発せられるのか、人体の神秘に思いをはせずにいられなかったのだ。腹筋、横隔膜、肺、気道、声帯、口腔。現在の計算機技術をもってしても流体と発声器官の連成振動問題は正確に解けないため、声質が形作られる過程は詳細にはわからない。かように未知である発声器官の、特に源を守る肋骨は声優にとって特別な部位なのである。特に彼女の場合、あのか細い身体で特別な存在感を示しているに違いなく、えもいわれぬ神秘性が感じられるのだ。もしこの夏誰かの肋骨を見る機会があったときには、釘宮理恵アイデンティティを守る骨の姿を想像するのもオツだ。(のり)