選考外

 以上、見てきたアニメ以外にももちろん優秀な声優アニメは存在する。ここでは惜しくも選から漏れたものたちを見ていこう。
 『月面兎兵器ミーナ』はアニプレックス×松岡超っぽさで一頭地抜けた存在感。恐らくこの時期の井上麻里奈を主人公に持ってこられる最後のアニメであった。その緊迫感と(まつお)課長キャスティングの繚乱っぷりは聴き応えがある。一期と二期で声優風景が変わったのは『ひまわりっ!!』。主役の松本華奈は初期のかわいさが少し減じたもののその分、ヒロインとして収まりが良くなった。全体的に一期のエッジが丸くなったのは一長一短か。介錯キャストの安定感といえば『京四郎と永遠の空』だが、しかしそこは矢作紗友里ヒロインによりアクセントが与えられている。矢作はもう少し力感が加われば完璧か。けどやっぱり下屋則子と判別しづらいよ。『VVV』と『デルトラクエスト』は高垣彩陽のデビュー作として記憶されるべきアニメであると同時に、前者はいい加減キャリアは積んできたがしかし初期の心意気は忘れない茅原実里、そして急激にこなれてきた辻あゆみとの中で中間に位置する彼女の美しさを、後者は主役二人が新人にもかかわらず屋良有作ほかの配置により落ち着いて聴ける。ニクール通して最終的に川澄綾子の幅の広さ、懐の深さ、相方の鏡としての透徹さを現出せしめたという点では『のだめカンタービレ』は後世まで記憶されて良い佳作。『ロケットガール』はこれまでにない頭身の長谷川静香、及びこれ以降増えた手塚まき演技の基点としての生天目仁美を登場させたという点で特筆に価する。
 春新番に目を向けてみると『桃華月憚』は魔窟と評していいほどの深さを持つ。これでそのままゆかながいたならばと思うとそら恐ろしい。ネタとベタのあわいで魅せてくれたのは『シャイニング・ティアーズ・クロス・ウィンド』。『らき☆すた』は、福原香織加藤英美里遠藤綾の魅力を世に知らしめたという点では評価できる。『怪物王女』は課長臭が耳につくが、しかしそれ以上にふがにこめる河原木志穂森永理科が職人芸を見せる。(宮)